
- 「確定申告って難しそうだな」
- 「書類が多くて面倒そう」
- 「簿記を習ったことがない」
特に初めて確定申告をする方は、上記のような不安を感じておられるかも知れません。
でも、ご安心ください。今は、スマホやパソコンで簡単に作成や申告ができるツールがあります。難しい計算も自動的に行ってくれるので、簿記を知らない初心者でも比較的簡単に作成できます。そこで、この記事では、確定申告をできるだけ簡単に済ませる3つの方法と、それぞれのメリットや注意点を分かりやすく紹介します。
また、確定申告には多くの時間がとられるものです。例えば、国際的な調査では日本のTax preparation time(税務準備時間:税の申告・準備・支払い全体にかかった時間) は平均129時間(約16日) と報告されています(2019年のデータに基づく)。また、個人の確定申告のための作業時間が平均 752分(約12時間32分) とのアメリカン・エキスプレスによる調査結果が報じられています。もちろん、確定申告にかかる時間は個人差がありますが、上記の調査結果からも大幅時間がとられることがよくわかります。
一方、私は青色申告業者として毎年確定申告をしていますが、毎年2時間か3時間で完了させています。ここまで時間を短縮できるのは「ちょっとしたコツ」があります。そこで、確定申告作成の時間を短縮するためのコツについても併せてご紹介していきます。
確定申告を簡単にする3つの方法
会計や簿記の知識が無くても、確定申告は簡単に作成できます。以下に、その方法を3つご紹介します。
| 方法 | 特徴 | 難易度 | 短所 | 向いている人 |
| スマホ申告(e-Tax) | 国税庁の公式ツール。マイナンバーカード連携で完結。 | 低~中 | 完全無料だが、初回登録に少し手間がかかる。 | 副業・給与以外の収入が少ない人 |
| クラウド会計ソフト | 自動計算や、明細読取などで効率化を図れる。 | 中~高 | 年会費がかかることがある。記帳のルールなどをある程度理解しておく必要がある。 | フリーランス・個人事業主 |
| 税理士に依頼 | プロがすべて対応。 | 低 | 売上、依頼内容によっては報酬が高額になることも。 | 収入・経費が多い人 |
特に素人にとってハードルが高いのが、法律の改正で計算方法や記入する内容などが変わることです。しかし、上記の方法であれば、改正内容にも対応してくれるので安心です。ただし、それぞれの方法にメリット・デメリットがありますので、自分の状況に合った方法を選びましょう。
次のセクション以降で、それぞれの作成方法の特徴、注意点などを解説していきます。
簡単な方法①:e-Taxとマイナポータルを使ったスマホ確定申告
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を使えば、スマホだけで申告が可能です。マイナンバーカードとスマホを連携させることで、本人確認から申告所の提出までオンラインで完結できますから税務署に行く必要もありません。
尚、この方法はかつては給与所得者向けでしたが、現在は個人事業主の事業所得の申告にも対応しています。ただし、画面が小さいため、入力項目が多い場合はパソコンで作業する方が良いでしょう
確定申告の手順
- 「確定申告書等作成コーナー」にアクセス
- 「スマホで申告する」を選択
- マイナポータルと連携(マイナンバーカードでログイン)
- 必要な情報(収入・経費・控除など)を入力
- マイナンバーカードで電子署名
- e-Taxで申告データを送信
- PDFの控えを保存
メリット
注意点
簡単な方法②:クラウド会計ソフトを使う
多くの個人事業主が使っているのが「クラウド会計ソフト」です。 複雑な計算も自動的に計算でき、各年の法律の改正などにもしっかり対応してくれるので、指示通り入力するだけで確定申告や決算書が作成できます。
以下に、代表的なソフトを3つご紹介します。尚、月額費用はこの記事を執筆している2025年11月時点のものですので、最新の料金を公式サイトで確認なさってください。また、ソフトによっては「年払いのみ」となっているものもあります。
| ソフト名 | 特徴 | 月額目安 |
| freee会計 | 初心者でも直感的に操作できる | 980円〜 |
| マネーフォワードクラウド | 銀行・カード連携がスムーズ | 900円〜 |
| やよいの青色申告オンライン | サポートが充実(プランによる) | 858円〜 |
メリット
注意点
とはいえ、慣れてしまえば翌年以降は圧倒的にラクになります。 確定申告のたびに悩む人ほど、早めに導入しておくことをお勧めします。
簡単な方法③:税理士に依頼する
このような方は、税理士に任せるのが最も簡単で確実です。
メリット
注意点
税理士に依頼するとどうしても費用がかかってしまいますが、「クラウド会計を使って自分で入力だけ行い、申告は税理士に依頼」といった方法で節約している人もいます。少しでも費用を減らしたい人は、選択肢の一つとして検討してみましょう。
尚、契約前に複数の税理士から見積りを取り、料金やどこまでのサービスが含まれるか確認することをお勧めします。
確定申告を始める前に確認しておきたいチェックポイント
確定申告をする場合は、以下の点を事前にチェックしておきましょう。特に、必要な書類がそろっているか確認しておきましょう。
尚、期限ギリギリになるとアクセスが集中するなどで申告がスムーズにできないことがあります。2月中に準備を始め、早めに申告を終わらせるようにしておきましょう。
確定申告を始める前のチェックリスト
| チェック項目 | 内容 |
| 申告が必要か確認 | 給与所得がある人(会社員・パートなど):給与以外の所得(副業・雑所得など)が年間20万円を超える場合。 ※「20万円」は「収入」ではなく「所得(収入-必要経費)」の額です 個人事業主・フリーランス・無職の人:年間の合計所得が基礎控除額(48万円)を超える場合 ※「20万円ルール」は適用されません |
| 必要書類の準備 | 源泉徴収票(給与所得がある場合)、領収書、マイナンバーカード、各種保険料の控除を証明する書類 |
| 提出期限を把握 | 通常は3月15日まで(翌営業日が平日なら繰り下げ)。 |
| 還付申告の期限 | 5年間有効。早めに出すと還付も早い |
【重要】マイナンバーカードの「電子証明書」の有効期限をチェック!
マイナンバーカードには、カード本体とは別に「電子証明書」の有効期限があります。マイナンバーカードには、次の2種類の電子証明書が搭載されています。
- 署名用電子証明書: 確定申告など「電子署名」が必要な手続きで使用(e-Taxで必須)
- 利用者証明用電子証明書: ログイン時の本人確認で使用(マイナポータル等)
e-Taxで確定申告する場合、特に重要なのは「署名用電子証明書の有効期限」です。この電子証明書の有効期限が切れていると、申告データを送信できません。
電子証明書の有効期限はカード本体よりも短い!
マイナンバーカード本体は発行から10回目の誕生日まで有効ですが、電子証明書の有効期限は「発行から5回目の誕生日まで」とカード本体よりも短くなっています。つまり、カードは有効でも「電子証明書だけが失効している」というケースがよくあります。いざ申告しようと思ったときに、有効期限が切れていると非常に焦ることになります。
有効期限の確認方法
電子証明書の有効期限は、以下の3つの方法で確認できます。
- カード受け取り時に渡される「電子証明書の有効期限通知書」を確認
- マイナポータルにログインし、「証明書」メニューから有効期限を確認
- コンビニのマルチコピー機に、マイナンバーカードをかざして確認
もし有効期限が切れていたらどうする?
電子証明書が失効していた場合、オンラインでは更新できません。すぐに住民票のある市区町村窓口に出向き、更新手続きを行いましょう(更新には本人確認書類が必要です)。
尚、確定申告シーズン(2月〜3月)は窓口が混雑します。また、普段は即日更新可能な自治体でも、確定申告シーズンは遅くなる場合もあります。そこで、1月中に必ず電子証明書の有効期限を確認するようにすると慌てなくてすむでしょう。
確定申告のスピードを大幅に上げる4つのコツ
人によって確定申告にかかる時間は様々ですが、例えば青色申告業者の場合、通常6時間~数日かかることがあります。私も青色申告業者ですが、毎年2時間か3時間で完了させています。
なぜ、ここまで短時間でできるのかというと「ちょっとしたコツ」があるからです。そのコツを4つご紹介します。
①:医療明細書は毎年1月に整理・集計する
病院や薬局などからもらった領収書がゴチャゴチャしていると、「医療費控除の明細書」の作成(入力)に時間がかかってしまいます。そこで、毎年1月になったら以下のように整理・集計しておくことで「医療費控除の明細書」の作成をスムーズに行えます。
- 昨年分の領収書を医療機関ごとに分ける。
- ①を支払名義人ごとに分けホッチキスなどでまとめる。
- ②の各合計金額をあらかじめ計算し、それぞれの合計額をメモなどにまとめておく。
②:記帳は日頃からマメにする
クラウド会計ソフトには、銀行やクレジットの明細を自動で取り込む機能があります。それでも、1年分まとめて取り込もうとするとそれなりに手間がかかります。また、明細をしっかり整理して保管していない場合、明細をそろえたり探したりするのにも時間がかかってしまいます。そこで、明細は日頃から入力すると、結果として確定申告シーズンに入って慌てずに済みます。
ちなみに、私は明細取り込み機能を使わず手入力しています。その理由は、以下の通りです。
- 明細の件数がそこまで多くない
- 日頃から大まかな売上や経費の額を把握しておくため
- 領収書をその都度ダウンロードしておくため
3について補足すると、私はクレジットカードでネット上で支払う経費も、必ず領収書をダウンロードするようにしています。なぜなら、クレジット明細だけでは「経費の証明にならない」と税務署から言われかねないからです。また、領収書によっては数カ月たつとダウンロードできなくなるものもあります。こうした理由から、その都度ダウロードするようにしています。
③:無理に個人と事業のお金を分けない
個人事業主の場合、個人の銀行口座やクレジットカードを事業に使っていることも少なくないでしょう。
ところが、個人事業主向けの本や、青色申告会のセミナーなどでは「個人のお金と、事業のお金はしっかり分けましょう」と言われます。そのため、個人の口座やカードで払っていても、無理に個人と事業に分けて記帳している人が少なくありません(大抵、後で訳が分からなくなるものです)。
実は、法律上「個人と事業のお金は絶対分けなければならない」という直接的な条文はなく、明確な罰則規定もありません。ただし、税務署に対する経費の妥当性を証明しやすくするため、また経営管理を正確に行うために「可能な限り分けて管理することが強く推奨されている」というのが本当のところです。
いずれにしても、記帳や確定申告では「実際のお金の流れ(実態)に合わせること」が必要です。つまり、売上が個人口座に入金される、また個人のクレジットカードや現金で経費を支払っているのであれば、その通り記帳・申告すれば良いのです。これだけで、かなり負担を減らせます。
この点に関して、更に詳しい情報や、実際の記帳の方法などは以下の記事を参照してください。
④:帳簿印刷はなるべく効率的に済ませる
帳簿や領収書などの書類には保存義務があります。
例えば「やよい」などで記帳し、最終的に帳簿を印刷するとします。この印刷に意外と時間がかかることがあります。帳簿の種類や量にもよりますが、30分ほどかかることもあるでしょう。そこで、帳簿を印刷している間に他の作業を行うなど、事前に段取りを考えておくとスムーズに作業できます。
なお、電子帳簿保存法の改正(2024年1月施行)により、電子データで受け取った請求書や領収書(PDF、メール添付など)は、原則として電子データのまま保存することが義務付けられています。単に印刷して保存するだけでは要件を満たさない場合があるため、最新の法令に沿った保存方法を確認しましょう。
まとめ
- 自分の状況に合わせたツールや専門家を選ぶことで、簿記の知識がなくても確定申告をスムーズに進めることができます。
- e-Taxとマイナポータルを使えば、税務署に行かず自宅からスマホで確定申告を完結できます。
- クラウド会計ソフトは、銀行口座やカード明細の自動取り込み機能があり、個人事業主にとって効率的で簡単な方法です。
- 正確さと時間の節約を最優先に考えるなら、専門家である税理士に代行を依頼するのが良いでしょう。
- 確定申告の提出期限、必要書類を事前に正しく把握しておくとスムーズに申告できます。
- 日頃からのマメな記帳を行う、1月中に領収書整理を済ませておくなど、小さな工夫の積み重ねで確定申告の作業時間は劇的に短縮できます。
自分にぴったりのスタイルと効率化のコツを取り入れることで、確定申告は驚くほどスピーディーに進められるようになります。ぜひ前向きな気持ちで取り組んで、余裕をもって申告を終わらせましょう。
Q&A:確定申告を簡単にする方法に関するよくある質問
Q1. 確定申告はどのような場合に必要ですか?
A. 副業や雑所得(本業以外の所得)の合計が年間20万円を超えた場合、原則として確定申告が必要です。また、個人事業主・フリーランス・無職の人は、年間の合計所得が基礎控除額(48万円)を超える場合に確定申告が必要です。所得とは、売上から経費を差し引いた金額です。
加えて、医療費控除(支払った医療費の一部が戻る制度)やふるさと納税の寄附金控除を受ける場合も申告を行う必要があります。申告の要否は個人の状況によって異なるため、判断に迷う場合は国税庁のホームページなどの最新情報を必ず確認してください。還付申告(納めすぎた税金を返してもらう申告)であれば、5年間有効です。
Q2. スマホ申告とクラウド会計ソフトは、どちらを選べば良いですか?
A. 申告内容のシンプルさで選ぶのがおすすめです。給与所得がメインで、医療費控除やふるさと納税などの控除を適用するだけの方は、無料で手軽な「スマホ申告(e-Tax)」が最適です。
一方で、フリーランスや個人事業主として活動し、複雑な経費計算や「青色申告(節税メリットが大きい申告方法)」を行う場合は、銀行連携などで作業を自動化できる「クラウド会計ソフト」の利用が向いています。ソフトによっては月額費用が発生しますが、仕訳(取引を勘定科目に分類すること)を効率化できるメリットがあります。
Q3. 個人用の銀行口座やクレジットカードを事業に使っても問題ありませんか?
A. 法律上、個人と事業の口座を絶対に分けなければならないという規定はありません。無理に分けようとして管理が煩雑になるよりは、実際のお金の流れに合わせて記帳するほうが負担を軽減できる場合があります。
大切なのは「実態に合わせた正確な記帳」です。個人のカードで経費を支払った場合も、その都度領収書をダウンロードし、適切に帳簿(取引の記録)へ記録していれば問題ありません。ただし、クレジットカードの明細だけでは経費の証明にならない可能性があるため、領収書の保管は徹底しましょう。
Q4. 確定申告を短時間で終わらせるために、今からできる準備はありますか?
A. 申告期間に入ってから慌てないよう、日頃からのマメな記帳が最も重要です。また「医療費控除の明細書」は、毎年1月のうちに領収書を医療機関ごとに整理し、合計額を計算しておくと作成がスムーズになります。
青色申告などで帳簿の印刷・保管(法律で定められた5〜7年の保存義務)が必要な場合は、印刷時間を考慮して事前に段取りを考えておくことも時短のコツです。確定申告の期限は通常3月15日までですが、期限直前はシステムが混雑するため、2月中の着手をお勧めします。

