
自営業者やフリーランスの方なら、確定申告の際に「どこまで経費として大丈夫か?」という疑問をお持ちかも知れません。あるいは、計上できる経費額が少なく、思ったよりも税金がかかったという方もおられるでしょう。そんな方にぜひ知っていただきたいのが、国が用意した「措法27」という特例制度です。
この制度を使うことで、経費として計上できる額が増えることで節税できるなど様々なメリットがあります。つまり「国がわざわざ用意してくれた節税制度」ですから、条件に合致している方は活用することで大きなメリットを得られる場合があります。
そこで、この記事では「措法27」の内容や対象となる方、具体的なメリットなどの詳細を、自営業者向けに分かりやすく解説します。
措法27(租税特別措置法第27条)の概要
「措法27」は「租税特別措置法第27条」の略称で、正式には「家内労働者等の必要経費の特例」と呼ばれます。
例えば、パートやアルバイトなどで給料をもらっている場合、55万円の給与所得控除があります。
一方、個人事業主は(複式簿記による青色申告特別控除を受けていない限り)控除額が少ないかゼロです。控除できるのは実際にかかった経費額のみになりますが、中には帳簿を整備しにくい働き方をしている人もいます。これでは、パートやアルバイトとの税負担の不公平感が出てしまいます。
そこで、特定の条件を満たしていれば、最大55万円を「必要経費として認められる最低限の金額(特例による必要経費)」として計上できる制度が「租税特別措置法第27条」です。実際の経費が55万円未満でも、55万円まで必要経費として算入できるため納税額を減らせるメリットがあります。また、人によっては事務処理の負担が軽減される場合もあるでしょう。

措法27適用前と適用後の比較計算
例えば、収入が120万円、実際の経費が30万円だった場合、措法27を適用する前と後では課税対象額にどれだけの差が出るのでしょうか? 仮に、措法27を適用して最大55万円の経費を計上した場合、以下のようになります。
| 項目 | 適用前(通常計算) | 措法27適用後 |
|---|---|---|
| ①収入 | 120万円 | 120万円 |
| ②経費額 | 30万円 | 55万円 |
| 所得(=①-②) | 90万円 | 65万円 |
このように、措法27を適用したほうが所得(課税対象額)が25万円少なくなるため、結果として税額が軽減されます。

摘要対象となる「家内労働者等」とはどんな人?
措法27の対象者は「家内労働者等」です。そして、「家内労働者等」には法律上の定義があります。主に次のような方が該当します(※)。
- 内職的に仕事を請け負っている人
- 家内労働法に規定される家内労働者(例:縫製、手工芸品の下請けなど)
- 集金人、電気やガスの検針人、検査員など特定の職種
- その他、特定の者から継続的に業務委託を受け、人的役務を提供している個人
特にフリーランスや副業をしている方は、仕事内容によっては④が該当し、措法27の対象になることがあります。判断が難しい場合は、税理士や税務署に相談してみましょう。
「特定の者から継続的に業務委託を受け、人的役務を提供している個人」とは、例えば特定の塾の講師、特定の会社専属の配送員などが挙げられます。ただし、単発の仕事や不特定多数を相手にする場合は対象外となるため注意が必要です

措法27のメリット・デメリット
措法27にはメリットだけでなく、デメリットもあります。両者をしっかり理解した上で、措法27を使うかどうか判断しましょう。
一般的なメリット
デメリットや注意点
無条件で55万が控除できるわけではありません
措法27は、あくまでも「実経費が少ない場合に特例として最大55万円までの経費を認めます」という制度です。「最大55万円」ということは、裏を返せば「誰でも一律55万円を控除できるわけではない(55万円未満もあり得る)」ということです。実際、収入の内容や経費額などによって「特例を使った経費」の上限額は変化します。
以下に、収入の内容や経費額によってどんな変化が生じるかをまとめます。
| ケース | 通常計算の場合 | 措法27の場合 |
|---|---|---|
| ①必要経費が認められる最低額 | 実際にかかった経費のみ(帳簿で証明する必要あり) | 最大55万円まで(実経費がこれ未満でも55万円として認められる) |
| ②実際経費が55万円以上ある場合 | 実際にかかった経費額をそのまま必要経費にできる | 55万円を超える経費計上は不可(措法27を使わず、実経費を計上した方が税額を軽減できる) |
| ③所得が事業所得のみのケース | 売上-実経費 | 売上-55万円(③のように実経費が55万円以上なら、実経費を計上した方がお得) |
| ④所得に給与所得が含まれる場合 | 給与所得と事業所得をそれぞれ別に計算 | 給与所得がある場合は、「55万円から給与所得控除額を差し引いた額」を上限として経費が認められる。 |
| ⑤所得に雑所得もある場合 | 雑所得も実際経費で計算 | 実際経費の差額を調整して、雑所得の方にも必要経費を配分できるようにする規定があり。 |
上記の内容から、措法27を使わない方が良い場合もあることが分かります。

措法27のよくある誤解や質問
措法27についてよくある誤解や質問に対する、一般的な見解をまとめたものです。前のセクションまででお伝えした内容と、一部被る点があることをご了承ください。また、正確な情報は、税理士や税務署に確認することをお勧めします。
①実際に経費が55万円未満なら、必ず55万円が使えるか?
他の条件を満たしていれば、実際の経費が55万円未満でも「55万円まで必要経費」として計上できます。ただし、以下の点に注意が必要です。
②実際経費が多いと恩恵がない?
実際の経費が55万円を上回る場合、恩恵は無くなります。この場合は措法27を使わず、そのまま実経費を計上する方がお得です。
③給与所得があると使えないことがある?
給与所得控除額などの条件次第では、以下のようなことがあるので注意が必要です。
④青色申告と白色申告で扱いが異なる?
青色・白色の違いで所得計算や控除、申告の方式、帳簿整理などが変わりますが、措法27そのものは変わりません。
とはいえ、措法27の適用有無に関係なく、帳簿をきちんとつけているほど証明がしやすくなるので、税務署から措法27の適用を否認されるなどのトラブルを回避できるでしょう。
⑤青色申告特別控除との併用はできない?
「家内労働者等」の条件を満たしていれば、青色申告特別控除と措法27を適用できます。
中には「青色申告特別控除と措法27は併用できないと聞いたことがある」という方もおられるかも知れませんが、青色申告特別控除と措法27の併用は制度上可能です(詳細は国税庁の通達等を確認してください)。
尚、私自身も青色申告特別控除と措法27を併用して確定申告したことがあり、税務署からの指摘などは特に受けていません。

措法27を適用する際の手続き、申告上の注意点など
措法27を適用する際には、いくつか手順や注意すべきポイントがあります。
①確定申告書への記載が必要
措法27を適用する場合、事前の申請手続きなどは不要です。ただし、確定申告書(特に第二表)に「措法27」または「租税特別措置法第27条」と記載をしなければなりません。他にも特定の記載が必要です。
②「必要経費の額の計算書」の添付が必要
原則として「必要経費の額の計算書」を作成し、特例を使う前後での計算明細を記載し、確定申告時に提出する必要があります。
③他の所得との兼ね合いとの考慮が必要
給与収入がある人や雑所得がある人は、それぞれの所得額・控除額との調整が必要です。尚、給与所得が多いと、措法27を使うメリットがなくなる場合があります。
④収入以上の経費額を計上できないことがある
通常、「総収入金額」より必要経費が多いと赤字になることがあります。一方、措法27で認められる経費額は、収入を上回らないように制限される場合があります。
⑤適用の対象外となるケースがある
事業の継続性・特定性・人的役務提供という要件を満たしていないと判断された場合、措法27の適用を認められない場合があります。また、給与所得が55万円以上あるなどの場合は、適用外となることがあります。

措法27を適用するためのポイントや対策
最後に、措法27を適用する際のポイントをまとめます。
| ポイント | 解説 |
|---|---|
| 1:収入・経費を定期的に記録する | たとえ特例を使うとしても、「実際にかかった経費」がどのくらいかは把握しておく必要があります。収入が変動する人、複数の所得がある人は特に重要な点です。 |
| 2:確定申告書の記載ミスを防ぐ | 「措法27」の記載を忘れたり、必要な欄に書かなかったりすると、特例が認められないことがあります。申告書を提出する前に必ず見直しましょう。 |
| 3:他の制度との併用を検討する | 青色申告特別控除など、他の所得控除制度や申告制度を同時に使える場合があります。どの制度が使えるか確認しておきましょう。 |
| 4:税務署や税理しなどの専門家に相談する | 自分が「家内労働者等」に当てはまるかどうか判断が難しいケースなど、疑問点は税務署や税理士に確認しましょう。 |
確定申告のやり方、書類の作成方法など、より実務的な内容を知りたい方へ
実際に確定申告をする際の書類の書き方、実務上の注意点などを当記事で紹介しますと長くなりますので、詳しくは以下の記事を参考になさってください。特に青色申告業者や、会計ソフトを使っている人にはかなり参考になるでしょう。

まとめ
- 措法27とは、家内労働者や特定のフリーランスの方が、実際の経費が55万円未満であっても、最大55万円を必要経費として計上できる非常に心強い特例制度です。
- 特定の相手から継続的に業務を請け負うなど「家内労働者等」の要件を満たせば、帳簿上の経費が少ない場合でも所得を低く抑え、効果的に節税することができます。
- この特例は青色申告特別控除とも併用が可能ですが、給与所得がある場合は控除額の調整が必要になるため、自分の所得状況に合わせて事前のシミュレーションを行うことが大切です。
- 適用にあたって事前の届出は不要ですが、確定申告書への「措法27」の明記と、専用の計算書の添付が必須となるため、申告時のルールをしっかり守りましょう。
「措法27」は自営業者やフリーランス、副業をしている方にとって、場合によっては大きな節税メリットになる制度です。自分が措法27の対象になるかどうかを確認し、対象となる方は積極的に活用しましょう。また、通常の経費計算と比較して有利な方を選びましょう。
尚、自分が家内労働者に該当するかや、確定申告の際に分からないことがあれば税理士や税務署に問い合わせて確認してください。
確定申告の書類の作成方法、実務上の注意点などは以下の記事も参照してください。

FAQ:措法27に関するよくある質問
Q1. 「措法27」とはどのような制度ですか?
A. 措法27(租税特別措置法第27条)は、正式名称を「家内労働者等の必要経費の特例」といいます。これは、実際の経費が少ない場合でも、最大55万円を「国が認める経費」として計上できる制度です。例えば、内職や特定の会社から業務委託を受けている方が対象となり、実経費が55万円未満であれば、この制度を適用することで所得を低く抑え、節税につなげることが可能です。
ただし、誰でも一律に55万円が控除されるわけではなく、収入額や他の所得状況によって上限額が変動する点には注意が必要です。最新の適用条件については、必ず国税庁の公式サイト等で最新情報を確認してください。
Q2. どのような人が「措法27」の対象になりますか?
A. 基本的には「家内労働者等」に該当する方が対象です。具体的には、内職を請け負っている方や、特定の会社から委託を受けて電気・ガスの検針や集金業務を継続的に行っている個人などが挙げられます。最近では、特定の企業から継続して仕事を請け負うフリーランスや副業ワーカーも、条件次第でこの措法27の対象となるケースがあります。判断のポイントは「特定の人や会社から継続的に業務を委託され、人的役務を提供している個人かどうか?」という点ですが、自身の働き方が該当するか不安な場合は、管轄の税務署や税理士へ相談することをお勧めします。
Q3. 青色申告特別控除と「措法27」は併用できますか?
A. はい、要件を満たしていれば、最大65万円の青色申告特別控除と措法27の特例は併用が可能です。青色申告特別控除は「所得」から差し引くものですが、措法27は「必要経費」の計算に関する特例であるため、それぞれ性質が異なります。「併用不可」と誤解されている方もおられるかも知れませんが、一定の条件のもとで両方のメリットを受けることができます。青色申告の複式簿記による信頼性と、この特例による必要経費の底上げを組み合わせることで、高い節税効果が期待できます。具体的な計算方法については、会計ソフトの活用や専門家のアドバイスを受けるのが安心です。
Q4. 副業で給与所得がある場合でも、55万円の枠を使えますか?
A. 給与所得がある場合、特例として認められる経費額は「55万円から給与所得控除額を差し引いた残額」が上限となります。例えば、パートやアルバイトの給与収入があり、すでに55万円以上の給与所得控除を受けている場合は、この特例による経費の積み増しはできません。一方で、給与所得控除額が55万円に満たない場合は、その差額分を事業所得や雑所得の経費として活用できる可能性があります。このように、給与所得の有無や金額によって「措法27」を適用するメリットがなくなる場合もあるため、事前のシミュレーションが重要です。具体的な計算については、お使いの会計ソフトや専門家のアドバイスを参考にしてください。
Q5. 「措法27」を適用するために事前の届出は必要ですか?
A. 措法27を適用するために、開業届のような「事前の届出」を提出する必要はありません。しかし、確定申告の際に所定の手続きを行うことが必須条件となります。具体的には、確定申告書(主に第二表)の備考欄等に「措法27」や「租税特別措置法第27条」と明記し、さらに「家内労働者等の必要経費の特例に関する計算書」を作成して添付する必要があります。これらの記載や書類の添付を忘れてしまうと、特例の適用が認められない可能性があるため注意してください。申告手続きをスムーズに進めるためにも、日頃から収入と支出の記録を整理し、必要書類の準備を整えておきましょう。

