
個人事業主は、個人の支出と経費の支払いが「あいまい」になりがちです。特に、どちらも同じクレジットカードで払っていると、何が個人の買い物で、何が経費なのか後で分かりにくくなることもあります。こうなると、お金の管理が煩雑になり、確定申告も余計に時間がかかってしまいます。
そこで、「個人支出と経費の支払いとでクレジットカードを分ける」ことが推奨されています。しかし実際には、分けるのが面倒なのでそのままになっている方も少なくないでしょう。
そこでこの記事では、クレジットカードを分けるメリットだけでなく、以下の点も解説いたします。
- 年度の途中からでもカードを分ける実務的な4つのポイント
- 事業用には、どんなカードを使うと良いか?
- カードを分けても、ポイントを合算して貯められるカード
特に、将来的な事業拡大や、法人化を視野に入れている個人事業主は、この記事を参考に早めにクレジットカードを分けることをお勧めします。
なぜ個人事業主でも「クレジットカードを分ける」ことが推奨されるのか?
個人用と事業用でカードを分けなくても、特に法律上の問題はありません。それでも、クレジットカードを分けるよう勧められるのには理由があります。簡単に言えば、クレジットカードを分けることで「経理作業の効率化」と「正確性の向上」につながるからです。以下に、その詳細なメリットを3つご紹介します。
分けるメリット1:仕訳の手間が大幅に削減される
もし、個人出費と経費を同じカードで支払っていたら、明細を見ながら1件ずつ「これは仕事、これは私用」とレシートと突き合わせて振り分ける必要があります。明細の行が多いほど、この作業には多くの手間がかかります。
しかし、事業専用のカードを作っておき、経費は全て事業専用カードで支払えば「そのカードの明細=経費一覧」になります。つまり、クレジットカードを分けるだけで、レシートと明細をいちいち突き合わせる膨大な手間から解放されるということです。
分けるメリット2:会計ソフトとの自動連携が楽になる
クラウド会計ソフトには、利用明細を自動で取り込む機能があります。この機能をフルに活用し業務を効率化するなら、明細に個人支出が一切混ざっていないのがベストです。
この観点からも、クレジットカードは分けるのが最善です。また分けることで入力漏れやミスが激減し、確定申告の準備がスムーズになります。
分けるメリット3:税理士への相談や税務調査対策がしやすくなる
1枚のカードで個人と経費の支払いをしていると、結果として税理士にプライベートな支出まで見られてしまうことになります。
事業主は「別に見られても気にならないよ」と思ったとしても、税理士は「見たくないものも見せられた」と気を遣ってしまいます。また、個人支出が混じっていると税理士もミスをしやすくなりますし、業務にも余計に時間がかかってしまいます。いずれにしても、カードが分かれていないと税理士に心理面・業務面で余計な負担となってしまいます。
また、個人と事業の支出が明確に区別されている方が、税務調査時の信用も得やすくなります。
状況によっては「あえてカードを分けない」という選択肢もあり
すべての個人事業主が、クレジットカードを分ける必要があるとも限りません。以下に当てはまる方は、あえてカードを分けないという選択肢もあります。
- 経費の件数が非常に少ない
- 事業を始めたばかりで売上がほとんどない
- 会計ソフトで明細を自動取得・自動仕訳している
今からカードを分けるべきか、このまま分けずにいるべきか迷っている場合は、ぜひ以下の記事もお読みになってみてください。
年度の途中からでも「クレジットカードを分ける」方法
「すでに年度が始まっているから今さらカードを分けられない」、「来季から分けるしかない」と諦める必要はありません。クレジットカードを分ける運用はいつでも始められますし、分けることのメリットも得られます。
既に混ざっている過去分の明細はどう処理する?
年度途中まで個人と経費が混在した明細は、事業に関係するものだけを「事業主借」という勘定科目で記帳すればOKです。
「カードの取り違え」を防止する工夫
せっかくカードを分けたのに、事業用のカードで個人の買い物をしてしまうなど「カードの取り違え」があっては意味がありません。そこで、カードを間違えないような工夫をしておきましょう。
例えば、カードそのものに「個人用」、「事業用」と分かるようにシールを貼っておくと間違いを減らせるでしょう。
また、Apple PayやGoogle Payといったアプリを使っている場合は2枚のカードを登録し、事業用カードに分かりやすい名前を付けたり、色で区別したりすることで間違いを防ぐこともできます。
ネット通販などは「事業用のアカウント」を作成する
Amazonや楽天など、公私で使う頻度が高いサービスは、仕事用アカウントを作成し、そこに事業用カードだけを登録しておけば間違いが少なくなるでしょう。
カードの引き落とし口座も分けておこう
事業用のカード料金は、事業用の口座から引き落とすように忘れず設定しておきましょう。また、事業用の口座がない場合は作っておくと良いでしょう。屋号があるなら、屋号入りの口座作成がお勧めです。
事業用カードには「個人カード」と「ビジネスカード」のどちらが良い?
「事業用カードはこれでなければならない」というものはありませんが、個人と事業用とで分ける場合、以下の3つの方法があります。
- 一般的な個人用カードを追加で発行する
- 複数枚のクレジットカードを保有している場合、そのうちの1枚を「事業専用」として使う
- 専用の「ビジネスカード」を発行する
このセクションでは、上記1~3それぞれの特徴や注意点などを解説します。
①:個人用のカードを追加で発行する
クレジットカードを1枚しか持っていない人、複数のカードは持っているけどいずれも事業専用には出来ないなどの場合は、個人用のカードを追加で発行し「事業専用カード」にします。
ただし、サラリーマンと比較し、個人事業主はクレジットカードの審査に通りにくい場合があります。そこで、以下に審査に通りやすいカードと、通りにくいカードの種類、審査に通りやすい個人事業主の特徴を紹介します。尚、以下はあくまでも「傾向」であり、実際に審査に通るかはどうかは属性などによって左右されます。
審査が通りやすい傾向にあるカード
審査が厳しめなカード
個人事業主でも審査に通りやすい人の特徴
②:手持ちのクレジットカードを「事業専用」として使う
既に、複数枚のクレジットカードを持っている人も少なくないでしょう。そのような方は、そのうちの1枚を「事業専用」として使うのが発行の手間もかからず簡単です。
実際、小規模な事業や副業レベルであれば「これで十分」と感じる人も多く、クレジットカードを分けている人の約7割がそうしています。
③:ビジネスカードを発行する
ビジネスカードとは「事業で使う支払いを想定して発行されるクレジットカード」で、以下のような特徴があります。
経費の額が大きく個人カードの限度額では不安がある、法人化も視野に将来的な事業拡大を考えている人は、ビジネスカードの発行を積極的に考えてみましょう。
そもそも、個人事業主はビジネスカードを発行できるの?
結論から言うと、個人事業主でもビジネスカードは発行できます。なぜなら、多くのビジネスカードが法人だけでなく、個人事業主・フリーランスも対象にしているからです。また、屋号が無くても申し込みできるカードも少なくありません。ただし、個人用のカードよりも審査項目は多くなります。
ビジネスカードの審査に通りやすい個人事業主の特徴
2枚に分けてもポイントを合算して貯められるカードは?
カードを分けると「ポイントが分散して貯まりにくくなる」ことが気になる方もおられるでしょう。そのような方は「個人用」と「事業用」を同じカード会社で統一することをオススメします。同じカード会社で同一名義のカードを2枚発行することで、それぞれのカードで貯まったポイントを合算できる場合があるからです。
尚、カード会社によって合算方法や条件が異なります。また、規約の改定などでポイント合算要件・手続き方法が変わっていることもありますので、発行前にカード会社のサイトで最新の情報を確認されるようお勧めします。
ポイントを合算させやすいクレジットカード
①:JCB
個人用は一般カード、事業用として「JCB Biz ONE」などと組み合わせます。
尚、個人カード同士のポイント合算は可能ですが、JCBの法人カード(Corporate)は個人カードとのポイント合算ができない場合があるので注意が必要です。
②:アメリカン・エキスプレス
個人用はアメックス・ゴールドやプラチナカード、事業用としてアメックス・ビジネス・ゴールドを組み合わせます。年会費は高めですが、ポイント還元・サービスが充実しています。
尚、ポイントを合算するにはカード会社に連絡する必要があります。
③:三井住友カード
個人用として三井住友カード(NL)やゴールド(NL)、事業用として「ビジネスオーナーズ」を組み合わせます。特定の支払いで、還元率がアップする特典もあります。
④:楽天カード
個人用はプレミアムカード、事業用は「楽天ビジネスカード」と組み合わせます。
注意点として、個人用は「プレミアムカード」であることが必須です。なぜなら、楽天ビジネスカードは、楽天プレミアムカードの「追加カード」という位置づけだからです。
⑤:セゾンカード(およびUCカード)
例として、個人用は「セゾンカードインターナショナル」など、事業用は「セゾンコバルト・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カード」を組み合わせます。同一名義のカードを登録すればポイントは自動合算され、ポイントの有効期限がないというメリットがあります。
貯めたポイントを個人で使う上での注意点
事業用カードで貯めたポイントを、個人で使っても問題はありませんし、法律で使い方が決められているわけでもありません。しかし、ポイントの額によっては扱いに注意が必要です。詳しくは以下の記事で解説しています。

まとめ
- 法的にクレジットカードを分ける必要はありませんが、分けた方が経理作業の効率や正確性がアップします。ただし、経費件数が少ないなど、状況によってはカードを分けない選択肢もあります。
- 年度の途中でも、カードを分けることができます。むしろ、早く分けた方が、それだけ早くメリットを得られます。
- 事業用カードを追加で作る、ビジネスカードを発行するという方法もありますが、既に持っているカードの1枚を「事業専用」に使う方法も一般的です。
- 同じカード会社で、同一名義でカードを2枚発行すれば、ポイントを合算して貯められることがあります。
特に、将来的な事業拡大や、法人化を視野に入れている個人事業主は、早めにクレジットカードを分けると良いでしょう。もちろん、いきなり完璧を目指すのではなく、まずは「仕事で使うPC用品や備品は必ずこのカードで買う」と決めるだけでも、翌年の確定申告はずっと楽になるでしょう。
