【中小企業向】リモートワークの生産性が下がる中小特有の4要因

阿吽の呼吸から、システム駆動型の組織へ。中小企業のためのリモートワークへのアップデート術

コロナ禍をきっかけに、中小企業でもリモートワークが増えました。ところが、リモートを導入したところ、以下のような課題に直面した会社も少なくありません。

  • 「リモートで業務効率が落ちた」
  • 「生産性が下がって困っている」
  • 「社員の状況を把握できない」

そこで、コロナ収束後にリモートを廃止したところ「通勤の負担が戻った」、「リモート可の会社に人材が流れ、採用競争力が低下した」などでリモートを部分的に再導入する中小企業もあります。いずれにしても、大企業に比べてリソースが限られる中小企業では、リモートワークの課題を放置すると人材確保にも影響しかねません

リモートワークは「生産性が低い」といった良くないイメージを持たれがちですが、実際にはリモートワークそのものが悪いのではなく、リモートに合わせた体制が作られていないことが主な原因です。そこでこの記事では、以下の点を中小企業の経営者や管理職向けに解説します。

  • なぜリモートワークで生産性が下がるのか?
  • 生産性を上げるための具体的な改善策

私自身、ある小さな会社でリモートで仕事しています。また、リモートワークのための基盤や仕組み作り、管理職的なポジションも経験しています。そうした実務経験に基づき解説していきます。

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大企業とは違う!中小でリモートの生産性が下がる理由

リモートワークで「生産性が下がった」と考えているは、決して中小企業だけではありません。

例えば、CNBCのJennifer Elias氏は、Googleはハイブリッド勤務のスケジュール(週に3日は出社すること)を遵守しない従業員に対して厳しい措置をとる旨を従業員に伝えたと2023年6月に報じています。また、BBCのNatalie Sherman氏は、Amazonがハイブリッド勤務制度を終了し、従業員に対し週5日オフィス勤務に戻るよう命じたと2024年9月に報じています。

このように、米国の大手IT企業においても、週の半分以上を出社とする「ハイブリッドワーク」への義務付け、またハイブリッド勤務も廃止するなど、オフィスへ回帰する動きが見られます。

しかし、大企業と中小とでは事情が異なります。中小でリモートの生産性が下がるのは、中小特有の理由があるからです。以下にその理由を4つ取り上げます。

リモート廃止すると、人材維持や獲得が難しくなる場合もあります

①コミュニケーションの質や量の低下

中小企業は、少人数で連携できることが大企業には無い強みとなっており、必然的にコミュニケーションも密になります。しかし、リモートワークではそれも難しくなります。

  • 今、どんな案件がどこまで進んでいるのか?
  • その案件の担当は誰なのか?
  • 現在の状況や次のステップは何か?

出社時にはこうしたことが容易に把握できていたものの、リモートでは把握しにくくなり業務が滞るようになります。

②マネジメントがより難しくなる

中小企業は規模が大きくないため、社員がちゃんと働いているのか、どんな課題に直面しているかなどを経営者などが把握しやすい環境にあります。

しかし、リモートでは社員の動きなどを直接目視で確認できないため、必然的に状況把握が難しくなります。結果として、管理職が適切な指示出しやフォローが行えず、生産性低下につながる場合があります。

③設備への投資不足

中小は大企業と比べ、ITツールやIT機器への投資が後回しになりがちです。

例えば、リモートワークに必要なZoomなどのビデオ会議や、チャットツールの導入が遅れ(または無料版の使用にとどまる)、電話やメールを中心としたコミュニケーションになりがちです。

また、パソコンの購入費用をあまり出せず、スペックの劣るパソコンで作業を強いられることもあります。

結果として、リモート環境での作業効率が悪化し、ストレスも増加しやすくなります

④社員のモチベーション維持が難しい

中小では特に、リモートでモチベーションが落ちやすい傾向があります。例えば、以下のような要因が挙げられます。

  • 他の人と顔を合わせることがなく「自分は組織の一員だ」と感じにくい。
  • 上司や経営者との距離感がより遠くに感じやすくなる。
  • 「よくやった」「ありがとう」と声をかけられることが減り、承認欲求が満たされにくい。

中小企業の中には、経営者との距離の近さや風通しの良さを組織の強みとして、大企業との人材獲得競争に対応しているケースが多く見られます。ところが、上記のようなちょっとした不満が積み重なると「どこで働いても同じ」、「別の会社でもいいかも」と感じやすくなり、少しでも条件のよい求人が見つかれば転職してしまうかもしれません。

リモートでワークは、中小企業の最大の強みである「少人数での密な連携」を発揮するのが難しい。リモートそのものに問題があるのではない。

リモートで生産性を上げるために中小が取るべき対策

リモートで生産性を上げるためには、リモートの弱点をカバーできるような体制や仕組み作りが欠かせません。このセクションでは、その具体的な方法を解説します。

リモートワークに強い組織を構築する3つの柱

①情報共有の仕組み化

直接顔を合わせることが少ない分、情報共有を仕組み化することが書かせません。例として以下の方法があります。

  • 毎朝のオンライン朝礼
  • 日報の作成
  • チャットベースのコミュニケ―ション体制

オンライン朝礼はzoomやGoogle Meetを使えますし、日報はGoogle WorkspaceやNotion、チャットはSlackやChatworkを活用できます。自社のITリテラシーや予算、セキュリティ要件に合わせてツールを選定しましょう。

どんな情報を、どのようなツールやチャンネルで共有するかなどのルール作りもしっかり行いましょう。尚、勤務形態などに合わせて朝礼のみ、日報のみ、朝礼と日報の組み合わせなどの調整をしても構いません。

②「リモートで仕事しやすい環境づくり」への投資を惜しまない

仕事は環境によって成果に大きな差が出ます。費用はかかりますが、かけた費用以上のパフォーマンスにつながることも少なくありません

特にリモートの場合、スペックの高いPCや高速な通信環境への投資を検討しましょう。導入にあたっては、IT導入補助金などの公的支援策を活用することで、コスト負担を軽減できる場合があります。

また、仕事に必要なITツールも無料のものでは機能に限界があり、使いづらいこともあります。必要に応じて有料版を契約し、快適に仕事できるようにしましょう。

ITツールや機器といった作業環境への投資を惜しまない

③マネジメントの可視化

リモートではコミュニケーションに制限があります。しかし、マネジメントを可視化することでカバーすることができます。

具体的には「タスク管理ツール」(Trello、Backlog、Notion、Todoist など)を活用します。

  • 誰が何をやっているか?
  • 現在の進行状況
  • どの仕事が完了しているか?

タスク管理を導入することで、こうした状況をチームで見える状態にできます。

タスク管理の「コメント機能」を情報共有にも使う

大抵の場合、タスク管理ツールにはコメント機能があります。コメント機能を使い、タスクに関連したコミュニケーションをとることでも情報共有ができます。

④「文書化」で仕事のスピードや質を上げる

リモートでは顔を合わせる機会が少ない分、コミュニケーションが限られます。そこを「文書化」で補っていきます。

マニュアル化で仕事をどんどん進められるように

オフィスでは上司や先輩に質問しながら仕事を進めていくこともできますが(正直あまり効率的とも言えませんが)、リモートではそれが難しくなります。しかし、業務マニュアルを作成しておけば、先輩や上司に質問する機会を減らすことができます。

また、マニュアルには作業手順だけでなく、「こういう場合はこうする」などQ&Aや過去の事例も充実させることで、自分の判断で作業をどんどん進められるようにします。

「企業文化」も文書化し共有する

一部の企業ではマニュアルに加え、「企業文化の文書化」という方法も取り入れています。

  • 会社の成り立ち、社名の由来
  • オーナーの価値観
  • 判断基準
  • その価値感や判断基準に至る背景

こうしたことも文書化し、社員に浸透させていきます。こうすることで考え方、判断基準などが社内で統一され、仕事の質も向上していきます。また、各人の組織の一員としての意識を高めることもできます。

マネジメントを可視化し、マニュアルなどの文書化を進めることで、直接対面できない状況をカバーする

⑤コミュニケーションで部下を積極的に気遣う

中小のリモートは孤立感が高まりやすいため、部下を気遣うようなコミュニケーションをとっていきます。

例えば、「1on1ミーティング」を定期実施することで、部下の課題把握やモチベーション管理に効果的です。

またチャットも「了解」、「ありがとう」という素っ気ない表現だけでなく、部下へのねぎらいや感謝が伝わるような表現を心がけます。加えて「こういう点が良かったです」など具体的なほめ言葉や、「もっとこうすると更に良くなりますよ」などのフィードバックを伝えることもできます。経営者、管理職がこうしたコミュニケーションを率先して行いましょう。

雑談やオンライン飲み会はやった方が良いか?

モチベーションアップのために雑談タイム、オンライン飲み会、社内チャットの雑談チャンネルの設置を推奨する記事もありますし、実際に行っている会社もあるようです。

ところが「仕事以外の付き合いをしたくない」、「とにかく仕事だけに集中したい」という理由でリモートを選ぶ人もいます。こうした人は雑談チャットやオンライン飲み会を煩わしく感じ、辞めるきっかけにもなりかねません。

いずれにしても、雑談やオンライン飲み会は、強制されると心理的負担になる層も一定数存在します。そのため、これらは一律に推奨するのではなく、自由参加とする、あるいは業務時間内のチャットでの適度な交流に留めるなど、自社の文化に合わせることが重要です。

また、飲み会などの小手先の方法よりも、働きやすい環境づくりなど土台からしっかり固める方が長い目で見て効果的かも知れません

⑥「成果」を基準とした評価も取り入れる

リモート環境では「仕事ぶり(仕事をしている様子)」が見えません。そこで、リモートワークでは、従来の「プロセス評価」に加え、達成すべき目標を明確にした上で、成果を基準とした評価も取り入れることが有効です。

ただし、適切な労働時間管理も考慮する必要がありますので、各職種に応じた公平な基準作りなど、バランスのとれた評価制度を整える必要があります。

意図的なケアと、成果ベースでの評価の取り入れ

まとめ

  1. 中小企業がリモートワーク導入で生産性が下がる主な原因は、リモートそのものの問題ではなく、コミュニケーションの質の低下やIT環境への投資不足など、リモートに適した体制が整っていないことにあります。
  2. 低下した効率を取り戻すためには、タスク管理ツールなどを活用して業務を「可視化」し、誰が何をしているかをチーム全体で共有できる仕組みを作ることが不可欠です。
  3. PCのスペック向上やツールの導入といった環境整備に加え、業務の「文書化(マニュアル化)」を進めることで、社員が上司に確認しなくても自律的に仕事を進められる土台を整えましょう。
  4. 離れて働くからこそ、定期的な1on1やチャットでの具体的な感謝の言葉など、社員の孤立を防ぎモチベーションを維持するための積極的なコミュニケーションを意識することが大切です。

小さな改善の積み重ねれば、中小でも「リモートにも強い組織」を作ることができます。いきなり全てをこなそうとはせず、まずは情報共有の仕組み化や、タスク管理の導入から始めてみましょう。

リモートワークに適用することで、企業はもっと成長し強くなれます

尚、リモートワークにおける管理方法については、以下の記事でも詳しく解説しています。ぜひお読みください。

出社と同じ管理はNG!リモートワーク向け業務・勤怠管理方法6選
リモートワークの管理に悩む方必見!出社と同じ管理方法は逆効果。タスク管理や朝礼、マニュアル化など、生産性を高め自主性を促す「仕組み」による6つの管理方法を解説。中小企業ですぐ実践できるノウハウが満載。

FAQ:リモートワークで生産性が下がることに関するよくある質問

Q1. 中小企業でリモートワークを導入すると、なぜ生産性が下がると感じるのでしょうか?

A. 中小企業は大企業と異なり、少人数での密な連携が強みです。しかし、リモートワークでは対面の機会が減り、「誰がどの案件をどこまで進めているか」が見えにくくなるため、この強みが損なわれやすくなります。また、大企業に比べてITツールやパソコンなどの設備投資が後回しになり、物理的に作業効率が悪化することも一因です。

生産性が下がるのは、リモートワークそのものが悪いのではなく、リモート環境に適した情報共有のルールや、業務を可視化(見える状態にすること)する仕組みが整っていないことが本質的な課題です。まずはタスク管理ツールなどを導入し、状況を共有することから始めるのが効果的です。

Q2. リモートワークでの生産性低下を防ぐために、最低限必要なIT設備はありますか?

A. スペックに余裕のあるパソコンと、安定した通信環境への投資は非常に重要です。スペックの劣る機器での作業は、処理待ちの時間が増えるだけでなく、社員に不要なストレスを与え、結果として生産性を下がる要因になります。また、無料版のITツール(チャットや会議ツールなど)は機能に制限があるため、必要に応じて有料版を契約し、ストレスなく仕事ができる環境を整えるべきです。

これらは単なる出費ではなく、社員のパフォーマンスを最大化するための必要な投資と言えます。なお、IT導入に関する補助金制度などは内容が変動するため、最新情報は必ず中小企業庁などの公式サイトでご確認ください。

Q3. 部下の仕事ぶりが見えない中で、どのように評価や管理をすれば良いですか?

A. 直接目視できない環境では、「仕事をしている様子」ではなく「成果」を基準とした評価も取り入れることが重要です。具体的には、タスク管理ツールを活用して業務を細分化し、誰が・いつまでに・何を完了させるべきかをチーム全体で可視化します。これにより、管理職は常に監視しなくても進捗を正確に把握でき、必要なタイミングで的確な指示やフォローが可能になります。

また、定期的な「1on1ミーティング」(上司と部下の1対1の対話)を実施し、業務上の課題や悩みを聞き取ることで、孤立感を防ぎ、リモートワーク中のモチベーション維持につなげることができます。

Q4. 社員のモチベーション維持のために、オンライン飲み会などは開催すべきでしょうか?

A. モチベーション維持を目的とした交流イベントは、必ずしも開催する必要はありません。リモートワークを好む社員の中には「仕事だけに集中したい」と考える人もおり、強制的な飲み会などはかえってストレスとなり、離職のきっかけになる恐れがあるからです。

むしろ、業務マニュアルを整備して「自分の判断で迷わず仕事を進められる」環境を作る方が、長期的な生産性向上には効果的です。また、チャット上で「ありがとう」という言葉に加えて、「具体的にどこが良かったか」というフィードバックを添えるなど、日常のコミュニケーションで承認欲求を満たす工夫を優先しましょう。

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