
もし、あなたがリモートワークを導入した中小企業の経営者や管理職であるなら、以下のような悩みを抱えておられないでしょうか?
リモートワークには通勤が不要などのメリットがある一方、「サボり」など社員の勤務実態に懸念を持たれることがあります。
例えば、厚生労働省が公表しているテレワークの労務管理等についての調査によると、テレワークを導入していない理由として、令和7年には4.3%が「進捗管理が難しい」ことを理由を挙げています。決して多くない割合ですが、令和2年の調査でも4.6%が進捗管理の難しさを理由をして挙げていることからも、一定割合の企業がリモートワークの勤務実態の把握に課題を感じていることが分かります。
また、同調査によると、テレワークの勤怠管理の具体的な方法として、33.6%が「上長などに対してメールによる報告を行う」、30.5%が「電子ファイルの出勤簿や勤怠管理システムの出勤簿等に自己申告で記入する」と回答しています。他にも「WEB上でのタイムスタンプの打刻」、「上長への電話報告」、「PCやスマホのログイン・ログアウト時刻の取得」などの対策を行っている企業もあると報告されています。
こうした勤怠管理は、社員の労働時間の管理(働ぎ過ぎ防止)などの観点からも実施されていることもあるので、必ずしも「サボり対策」として行われているものではありません。しかし、少人数体制の中小企業では一人の生産性低下が会社の利益や生産性に大きく影響するとの懸念から、「なるべくサボらないように働いて欲しい」考えるとしても無理はないでしょう。
しかし結論から言うと、「サボり対策」に力を入れるべきでありません。なぜなら、サボりを防止しようとすると仕事への意欲低下、離職につながるなど本末転倒の結果になりかねないからです。
そこで本記事は主に中小企業向けに、以下の点を解説していきます。
私自身、中小企業でのリモート勤務だけでなく、リモートワークの体制づくりや管理業務に携わっています。こうした経験に基づき解説していきます。
「サボり対策」に力を入れるべきではない3つの理由
理由①:そもそもサボりを100%防ぐことは不可能
リモートは以下のような理由で、サボりが起こりやすいとされています。
つまり、上記の理由だけを見れば「出社勤務とは異なる環境がサボりを誘発している」ということになります。
では、会社に来れば誰もサボらないでしょうか? 何を「サボり」とするかは色々な考え方がありますが、大抵の会社では以下のような「サボり」はよくあるでしょう。
- タバコ休憩(喫煙しない人からすればサボりでしかない)。
- 目の前の仕事に集中せず、おしゃべりしている。
- 隠れてスマホで遊んでいる(動画視聴、ゲームなど)。
- パソコンで仕事をするふりをして、業務以外のことをしている。
- 日中はダラダラと仕事し、夕方~夜に本気を出して残業代稼ぎをする(※こうした不要な残業は生産性低下に加え、コスト面や労務管理上のリスクもあり)。
このように、出社しても何らかのサボりは発生するのが現実です。そうであれば、リモートワークでのサボりを完全に防ぐのは余計に不可能なことです。
興味深いことに、リモートワークのマネジメントに関する実態調査によると、リモートワーカーの6割が「サボり経験あり」と回答しています。また、マネジメント側の8割以上がサボりを黙認している、あるいは特に対応をしていないと回答しています。こうした調査結果から、リモートワークにおけるサボりをそもそも防ごうとしていない、あるいは実質的に不可能だと考えている企業も少なくないと推測できます。

理由②:リモートの「サボり対策」は厳しくなりがち
先にも触れたように、出社していてもタバコ休憩や私語といったサボりは発生します。しかし、余程のことがない限り「やることをやっていればある程度は大目に見る」ことも少なくないでしょう。
これに対し、リモートは以下のように社員を監視する方向に動き、結果として出社時よりも厳しくなることがあります。
出社以上に厳しくサボり規制しようとすると、監視されていることへのストレスが増えます。また、ちょっとした休憩や気分転換もできないと感じ、仕事への意欲を低下させてしまうでしょう。
いずれにしてもサボりを防止しようとして、社員のストレスを増やし、仕事への意欲を低下させては本末転倒です。

理由③:自宅では仕事を中断せざるを得ないこともある
特に自宅では、私的なことでも対応せざるを得ないことが起こります。例えば、「子どもが泣き出した」など家族の世話が生じることがあります。これは本人の意図と関係なく、一時的に仕事を中断せざるを得ない状況です。
ところが、サボり対策を厳しく行ってしまうと、こうした偶発的なことへの対応すらも非とするような雰囲気が作られてしまう場合があります。こうした雰囲気の醸成は、結果として「働きにくい」、「息苦しい」と感じさせ離職にもつながりかねません。
リソースの少ない中小がリモートワークで本当にすべき対策
社員が自律的に成果を出せる仕組みを作ろう!

先のセクションで解説したように、リモートでサボりを100%防止するのは現実的に不可能ですし、サボりを防止しようとするほど仕事への意欲を低下させることになります。中小企業がこうした対策に、少ない人手や資金を割くのは避けるべきでしょう。
むしろ中小企業は、サボり防止よりも「社員が自律的に動き、成果を出しやすい仕組み」を作ることに力を入れましょう。このような仕組みであれば社員の意欲も向上し、結果としてサボりも減っていくでしょう。また、限られたリソースを有効活用できます。
具体的な方法を以下に紹介します。

①:タスク管理で業務の可視化を進める
タスク管理とは、何をするべきかを洗い出してリストアップすることです。その上で、以下の点を決めていきます。
- タスクの優先順を決める。
- 各タスクの期限を決める。
- 各タスクの担当者を決める。
これらをできるだけ細かく決めることによって、社員は「自分が何をいつまでにすべきか?」をハッキリ識別できます。また、よほどやる気のない社員でもない限り、「期限までに終わらせよう」という意識が働き成果も出しやすくなることが期待できます。
また、管理職は各タスクの完了・未完了を確認し、遅れ気味のタスクがあれば担当者に確認を入れるなどの手を打てます。納期遅れを未然に防ぐことができるでしょう。
尚、タスク管理については以下の記事も参照してください。

②:日報を作成させる
業務の開始時、また終了時に日報を作成させます。「それがなぜ成果につながるの?」と思うかも知れませんが、意外と侮れない方法です。短いオンライン朝礼と組み合わせても構いません。
朝の日報で記入する項目の例
こうしたことを記入することで、今日やるべきことなどを整理でき、仕事モードへの切り替えができます。また管理職も、メンバーの調子、キャパシティなどを把握できます。
終了時に記入する項目の例
その日の振り返りを記入することで、気持ち的にも区切りをつけることができます。また、良かった点や改善点などを各自が分析することで、今後の生産性向上にも役立つことに何か気付くかも知れません。加えて、「振り返りをしっかり記入しなきゃいけない」という意識が働くので、結果としてサボり防止にもなるでしょう。

③:時間計測をさせる
各タスクにかかった時間を、ツールを使って各自に計測させることも生産性向上に有効です。
時間計測をすれば、「思ったよりも作業が早く終わった」、「思ったよりも時間がかかった」などが一目瞭然です。また、日報の振り返り時の参考にもできます。
不正計測をどう防ぐか?
時間計測ツールは作業者が自分で操作しますので、「不正に計測する人もいるのでは?」と思うかも知れません。確かに不正計測を100%防ぐことはできませんが、計測結果をチェックする仕組みを導入することで、ある程度は把握できます。
例えば、明らかに時間のかかり過ぎているタスクに対して「なぜこんなに時間かかったの?」などの確認を入れるなどの方法があります。こうした計測がごくたまになら「ただの計測ミス」かも知れませんが、頻繁にあるようなら不正計測も疑われます。
いずれにしても、計測時間もチェックしていることを社員が知れば、ある程度の不正計測の予防にもつながります。また不正計測を続けていると、やがてどこかで辻褄が合わなくなるので、定期的なチェックを続けることで不正を発見しやすくなるでしょう。
特定のタスクに時間がかかってるのは、不正計測とは限りません。実は何らかの問題で引っかかっておりなかなか進捗しないなど、ボトルネックが発生している場合もあります。このような場合は、会社として社員をサポートするなどボトルネックを解消する措置が必要です。

④:労働時間ではなく「成果」で評価する
日本では長らく、社員の労働時間で評価する習慣が続いていました(結果として無駄な残業が多く、労働時間が長い割に生産性が低いなどと指摘されることがあります)。こうした労働時間による評価をリモートワークに持ち込むと、社員を常時監視するような方向に行ってしまう場合があります。
しかし、何らかの「成果」を軸に評価すれば、社員を常時監視しなくて済みます。また社員も、「成果を出そう」という意識が高まり、サボろうとする気持も薄れるでしょう。
評価軸を労働時間から成果へとシフトする場合でも、企業は労働基準法に基づいた適正な労働時間の管理・把握を引き続き順守する必要があります
リモートワークにおける「成果」の例
「成果」と聞くと、売上がいくら向上したとか、何件契約を獲得した、ノルマを達成したなどをイメージしがちです。しかし、ノルマベースの評価は社員を疲弊させることになります。
ここで言う「成果」とは以下のようなものを指します。
こうしたことタスク管理ツールや、メッセージの履歴、チームリーダーの意見なども踏まえて評価していきます。
社員にも成果の基準を明確に示しておく
あらかじめ社員にも成果の基準を事前に示しておくことで、モチベーション低下を予防することができます。
また、人によってリモートワークの向き・不向きもあるでしょう。こうした点を見極める上でも、成果ベースで評価するのが最適です。もし、明らかにリモートに向いていない社員がいれば、出勤するよう促すなどの措置をとることもできます。また、客観的で明確な成果指標を設けることで、評価に対する納得感を高め、生産的な対話を行いやすくなるでしょう。
出社を促す場合は、就業規則に「業務上の必要がある場合に就業場所を変更できる」旨の規定があることを確認した上で、個別の状況に応じた丁寧な対話とプロセスを踏むことが推奨されます。法的判断が伴いますので、実施を考えている場合は、顧問弁護士や社会保険労務士への相談することをお勧めします。

まとめ
- リモートワークでは、厳しすぎる監視よりも、社員が自律的に動ける「成果を出すための仕組み」を作ることが大切です。
- タスク管理によって業務を可視化することで、「何をいつまでにすべきか」が明確になり、社員の迷いや不安を解消できます。
- 日報や時間計測を取り入れると、社員自身が業務を振り返るきっかけになり、自分自身で仕事をコントロールする力が自然と育まれます。
- 労働時間ではなく「成果」を正当に評価する基準をあらかじめ示しておくことが、結果として最も効果的なサボり対策へと繋がります。
中小企業だからこそ社員一人ひとりのモチベーションを大切にし、リモートでも生産性を向上させるような仕組み作りに力を入れましょう。

尚、タスク管理などリモートワークの生産性を向上させるツールについては、以下の記事を参照してください。

FAQ:リモートワークのサボり対策に関するよくある質問
Q1. リモートワークでのサボり対策として、PCの監視ソフトやカメラの常時接続は必要ですか?
A. 結論から言うと、厳しすぎる監視は逆効果になることが多いためお勧めしません。カメラを常時オンにしたり、監視ソフトで操作をチェックしたりする対策は、社員に強いストレスを与え、仕事への意欲を低下させる恐れがあります。また、リモートワークでは家庭の事情で一時的に席を外す場面も避けられませんが、過度な監視はそうした柔軟な働き方を阻害し、離職につながるリスクもあります。社員を「監視」して縛るのではなく、自律的に働ける「仕組み」を整えることが、結果として最も効果的なサボり対策になります。
Q2. 具体的に、監視以外で効果的な「リモートワークのサボり対策」にはどのようなものがありますか?
A. 社員が自律的に動けるよう「業務の可視化」を進めるのが効果的です。具体的には、タスク管理ツールを使って「誰が・いつまでに・何をすべきか」を明確にすることです。また、業務開始時と終了時に日報を作成し、一日の予定と成果を振り返る習慣を持たせることも有効です。日報は単なる報告作業ではなく、社員自身が仕事モードへ切り替えたり、改善点に気づいたりするための「セルフマネジメント(自分自身で業務を管理すること)」のツールとして機能します。このように「サボらせない」工夫よりも「成果を出しやすくする」環境づくりに注力しましょう。
Q3. リモートワークで正当に評価を行い、サボりを防ぐための評価基準はどう設定すべきですか?
A. 労働時間ではなく「成果(仕事の結果)」を主な軸に評価する仕組みを導入しましょう。ここで言う成果とは、単なる売上目標だけでなく、「タスクを着実にこなしているか」「チャットへのレスポンスは適切か」「仕事の質やスピードに改善が見られるか」といった具体的な行動指標を含みます。評価基準を事前に社員へ示しておくことで、不公平感がなくなり、社員のモチベーションも維持しやすくなります。時間を基準に管理しようとすると監視が厳しくなりがちですが、成果で評価することで、社員は自主的に効率を追求するようになり、結果としてサボりの抑制につながります。
Q4. 明らかにリモートワーク中にサボっている社員に対し、出社を命じることはできるのでしょうか?
A. 業務上の必要性がある場合、就業場所を変更して出勤を促すことは可能ですが、慎重な手続きが必要です。まず、自社の就業規則(会社と社員の間のルールを定めた書類)に「業務上の必要がある場合に就業場所を変更できる」といった規定があるか確認しましょう。その上で、一方的に命じるのではなく、個別の面談を通じて状況を確認し、丁寧な対話を行うことが推奨されます。ただし、強制的な配置転換や出勤命令には法的判断が伴うため、実施する際は必ず顧問弁護士や社会保険労務士などの専門家に相談し、最新の法規制やガイドラインに基づいた対応を行ってください。

